容量市場パブコメのたね:3/28(木)18時マデ【制度検討作業部会第十五次中間とりまとめ(案)】

グリーンピープルズパワー株式会社は、電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会第十五次中間取りまとめ(案)への意見を提出しました。ご参考ください。

電力・ガス基本政策小委員会
制度検討作業部会第十五次中間とりまとめ(案)に対する意見募集について
意見募集要領(提出先を含む):意見募集要領 意見用紙
命令などの案:電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会 第十五次中間とりまとめ
受付締切日時:2024年3月28日18時0分

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620124012&Mode=0

「第十五次中間取りまとめ(案)」(以下「取りまとめ案」)に対する意見を述べる前に、まず容量市場の持っている問題点について指摘し、その問題を解決するために必要な課題を示し、その上で今回の「取りまとめ案」についての意見を述べる。

1、容量市場の抱える根本的な欠陥
1)本来の目的達成ができない仕組みであること
2)脱炭素という視点が欠落していること
3)再生可能エネルギーへの評価が極端に低いこと

2、容量市場の改革すべき項目
1)メインオークションの入札容量(必要とされる供給力)を小さくする。
2)設置後11年を経過した電源の参加を禁止する。
3)FIT再エネによる控除量を大きくする。

3、以上を踏まえた、第十五次中間取りまとめへ(案)への意見
1)需給調整市場と容量市場の重複をさせない制度が必要
2)託送負担分は需給調整市場に整理する
3)追加設備量は計算外とする
4)発動司令電源は需給調整市場に整理する
5)「売り惜しみ」という考え方を廃止する

1、容量市場の抱える根本的な欠陥

1)本来の目的達成ができない仕組みであること
容量市場は元々、将来の電源確保を目的として作られた制度である。しかし、結果として、既存電源ばかりが落札し、新規電源のためのインセンティブとしては機能しておらず、古い電源を維持するための仕組みとなってしまった。本来は廃止することが望ましい制度であるが、あくまで維持するのであれば、大胆な仕組みの改訂は不可欠である。

2)脱炭素という視点が欠落していること
最大の欠陥は、再エネ発電所がサポートされず、古い化石燃料火力がサポートされることで、地球温暖化対策にならないことである。その欠陥を補うべく、長期脱炭素電源オークションが追加されたところではあるが、元々の枠組みを変更していないため、結局は再エネの普及促進にはなっていない。

3)再生可能エネルギーへの評価が極端に低いこと
再生可能エネルギーは、現時点ではFIT再エネと非FIT再エネに分かれる。非FIT再エネは現状では極めて少ないが、FIT制度が事実上終了したことを踏まえて、今後は非FIT再エネの急速な拡大が予測されるところである。
FIT再エネは太陽光発電だけですでに6000万kWを超えており、H3需要発生時における寄与率をより正確に予測する必要がある。

2、容量市場の改革すべき項目

1)メインオークションの入札容量(必要とされる供給力)を小さくする。
入札容量はH3に稀頻度リスク(1%)、厳気象対応(3%)、偶発的需給変動(7%)、持続的需給変動(2%)、追加設備量(2〜3%)が加えられ、最大電力の15~16%増しの量とされている。日常的に運転可能な発電所だけでなく、特別な状況で必要になる発電所までも容量市場で確保しようとしていると言える。しかし、稀頻度リスクや厳気象など、これらに対応するべきは送配電事業者であり、それは需給調整市場で対処されるべき課題である。
この入札容量には、需給調整市場で行うべき役割が重複されており、それによって発動司令電源の重複入札や、ペナルティを恐れて必要な市場投入をためらう事例も発生していると、本取りまとめ案にも書かれている。
この15~16%を外し、合わせて長期脱炭素電源オークションによって入札された容量は、順次、入札容量から削減していく。2023年度の長期脱炭素電源オークションでは、脱炭素電源の募集400万kWと、LNG専焼火力の3年分600万kWの入札が行われた。合計で1000万kWであり、これも来年度の入札容量からは差し引くべきである。

2)設置後11年を経過した電源の参加を禁止する。
容量市場の本来の目的は、新規発電所の建設促進にある。古くてコスト回収を終えた発電所が大量に入札に参加している状態では、新規発電所は逆に弾き出される。そこで11年以上経過した発電所の入札参加は禁止とする。脱炭素という観点からは、石炭火力はそもそも入札禁止とされるべきであり、水素・アンモニア混焼、CCUS等の石炭火力は長期脱炭素電源オークションにのみ参加を認めることとする。

3)FIT再エネによる控除量を大きくする。
FIT再エネの控除枠を現状の1100万kWから3300万kWに拡大する。FIT再エネは太陽光発電だけでも、すでに6000万kWを超え、FIT風力もおよそ1000万kWとなっている。再エネのH3発生時の寄与度を毎年検証し、これに基づいて、FIT再エネの控除枠は毎年見直す。
石炭火力の入札禁止等によって、古い化石燃料火力の市場退出が促進されれば、系統接続の空き容量が拡大する。この空き容量を活用して、積極的に非FIT発電所の建設を促進し、容量市場への入札参加も促進する。

3、以上を踏まえた、第十五次中間取りまとめへ(案)への意見

1)需給調整市場と容量市場の重複をさせない制度が必要
取りまとめ案では容量市場と需給調整市場が場合によって重複しており、参加する電源がかえって機能を発揮できない状況が生まれていることが指摘されていた。
二つの市場の役割をきちんと分けるべきであり、重複入札を認めるべきではない。

2)託送負担分は需給調整市場に整理する
稀頻度リスクや厳気象対応などは、送配電事業者が対応するものであり、需給調整市場に一本化して整理されるべきである。この機能を容量市場に持たせようとするところに無理が生じている。
5ページの参考図2.1-1では、必要供給力と費用負担が図示されているが、託送負担分8%が、稀頻度リスク1%と偶発的需給変動7%の和のようにも書かれている。そうであれば、これは送配電会社が負担するのではなく、送配電会社側で責任を持って対応すべき需給調整業務である。厳気象対応も追加的設備の確保も同様であり、これらが小売電気事業者側の対応すべき業務のように書かれていることに違和感がある。小売電気事業者の業務と送配電事業者の「業務」をきちんと区分し、その責任を明確にすべきである。

3)追加設備量は計算外とする
「追加設備量」とは、「計画停止可能量を確保するために必要な供給力」と書かれている。計画停止は定期点検のためのものであるが、そもそも夏冬の需要逼迫時に行うものではない。H3が想定される時期に、これが想定されるということ自体に違和感がある。必要供給力からは外して考えるべきものである。

4)発動司令電源は需給調整市場に整理する
3―1)で十分に機能を発揮できていない恐れがあるとしたものは発動司令電源である。現状では容量市場と需給調整市場の両方に応札でき、落札もできる。しかし容量市場で発動司令が出された時、すでに需給調整市場で活用されていた場合、容量市場で約束したkW・KWhが出せない恐れがあるため、あえて需給調整市場の求めがあっても発電を行わないケースがあるということである。この電源が需給調整市場に供給していれば、需給逼迫を免れ発動司令には至らなかった可能性があるにも拘らず、容量市場があえて需給逼迫に追い込むという図式である。
このような不都合を防止するためには、容量市場における発動司令電源という対象項目をやめ、発動司令電源に該当する電源は全て需給調整市場に応札すべきものと整理すべきである。

5)「売り惜しみ」という考え方を廃止する
容量市場の問題は入札容量が大きすぎることである。2の1)で、これを小さくするように指摘し、2−2)では古い発電所の入札参加を禁じるべきと指摘したが、現状の運用は全く逆行しており、すべての発電所に対し参加を強制する考え方となっている。参加を強制しなければ、4年後の容量が確保できない可能性があるという懸念からであろうが、現状で日本の発電所が不足しているわけではない。
むしろ脱炭素の目標には合致せず、立ち上げ費用が高額となるような発電所は市場退出を促した方が、気候危機の観点からも、電気料金を下げるという目的にもかなったものである。現状の考え方は、脱炭素のための化石燃料フェードアウトを阻害していると言わざるを得ない。

以上

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