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〜市場価格高騰について〜
2020年の末から今年にかけて発生した市場価格の高騰について、政府が検証した中間取りまとめに対する意見募集が始まっています。
新電力や消費者である私たちに費用負担をさせる仕組みは、依然として変わっていません。
誰でも政府に意見を提出することができます。
みなさんも、社会を変えるために、ぜひ自分の意見を出してください。
グリーンピープルズパワー株式会社は、「2020年度冬期の電力需給ひっ迫・市場価格高騰に係る検証中間取りまとめ(案)及び一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則の一部を改正する省令案等の概要に対する意見募集」について、下記のとおり提出しました。
意見公募要領、関連資料、その他の情報は、電子政府の総合窓口に案件として記載されています。
案件番号 620121018
2020年度冬期の電力需給ひっ迫・市場価格高騰に係る検証中間取りまとめ(案)及び一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則の一部を改正する省令案等の概要に対する意見募集
※2021年5月29日23:59まで
<グリーンピープルズパワー株式会社の提出内容>
1、電力市場=JEPX(卸電力取引所)の約定システムの問題
2、インバランス料金の問題
3、999円/kWh買い戻しの問題
4、インバランス料金上限価格設定について
5、FIT特定卸供給の問題
6、大量の資金移動の問題
7、売入札量の判断ルールの問題
8、隠されている原発問題
9、電力市場の公正確保のための課題
1、電力市場=JEPX(卸電力取引所)の約定システムの問題
該当箇所:8、9、29ページ
意見内容:グロスビディングは一定量を「実売入札量」として残すことを義務化すべきである。
理由:2020年度冬季の市場価格高騰の最大の原因は、電力市場で大量の「売り切れ」が発生したことである。電気は「なまもの」であり、作ったらすぐに使わなければならないし、使う必要性があるときに作らねばならない。大根やお酒等の商品販売や金融取引とは異なる緊急性と即応性が必要である。そういう性質の電力市場において「売り切れ」が容認されると、単に市場の混乱にとどまらず、電力価格高騰による経済への影響、日本全体の需給への影響、ひいては大停電のような社会的トラブルへとつながる可能性がある。
「売り切れ」を起こり難くするには、旧一般電気事業者が一定量の「実質売入札量」を確保することが求められる。グロスビディングは「売入札」に対し「買い戻し」も認めているため、例えば毎日2億kWhは市場に残すというようなルール設定を行うことである。
「売り切れ」が発生しなくなれば、約定できない新電力はなくなり、売り切れによるインバランスの発生もなくなる。大量のインバランスが発生しなくなれば、インバランス料金の高騰もなくなり、市場は安定する。もし市場に残した電気が売れ残れば、それを一般送配電事業者が「予備力」として活用すればよい。
2、インバランス料金の問題
該当箇所:16、17ページ
意見内容:電力市場で約定できなかったらインバランスになるというルールを廃止すべきである。
理由:本来のインバランスは、小売電気事業者における需給計画と実需給の差である。約定できなかった時間帯の需要全てがインバランスになるというルールは、発電原価から大きく逸脱するべきでないというインバランス料金の考え方にも抵触し、いたずらにインバランスの発生量を大きくする。
したがってこれを「調整供給」もしくは「補填供給」と名付け、約定価格プラス数%の手数料によって供給することにする。インバランスとは別の仕組みとすることにより、万が一「売り切れ」が発生した場合でも、新電力が高値買いに走ることはなくなり、インバランス料金が高騰することもなくなる
3、999円/kWh買い戻しの問題
該当箇所:検討されていない。
意見内容:旧一般電気事業者の買い戻し価格を499円/kWhに下げるべきである。
理由:2020年度冬季の市場価格高騰では、新電力がインバランス料金となることを回避する目的で高値入札を行ったこと以外に、価格相場全体を引き上げる999円/kWhでの買い戻しの問題がある。この買い戻し量が増えれば、買入札曲線を売入札曲線(売り切れているので実際は直線)の外に押し出し、買入札と売入札の約定点を上に押し上げる。
中間取りまとめ案では何も書かれていないが、今後も「売り切れ」が容認され、大量のインバランスが発生する仕組みのままにされるのであれば、この買い戻し価格は下げておかねばならない。499円/kWhであれば、2020年度冬期の市場価格高騰の最高値も100円/kWh程度で収まっていた可能性があることから、499円/kWhを提案する。
4、インバランス料金上限価格設定について
該当箇所:46、74、75、76ページ、
意見内容:インバランス料金上限はもっと低くするべきである。
理由:「売り切れ」が発生し、現状と同じく約定できなかった需要分全てインバランスになるというルールがそのままであれば、今後も大量のインバランスが発生する可能性がある。それが需給ひっ迫と同時に発生すれば、インバランス料金は200円/kWh、予備率3%以上であっても80円/kWhの上限に張り付く可能性があるというのが、今回の改正(一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則の一部を改正する省令案)である。
200円は平均的市場価格の20倍、80円は8倍になり、新電力にとってはまだ経営的にインパクトのある数字であると考えられる。市場の約定ルールやインバランスルールが何も変更されず、このインバランス料金上限の改正のみしか行われないのであれば、予備率3%を下回る需給ひっ迫時に80円/kWh、それ以外では45円/kWhと緩和されるべきである。
5、FIT特定卸供給の問題
該当箇所:18、19、20ページ参照。
意見内容:FIT再エネ「特定卸」による一般送配電事業者の余剰利益は新電力に返還すべきである。
理由:FIT制度は再エネの電気を一定期間、一定価格で買い取るという制度。2012年にスタートしたが、電力自由化が進展した2017年度から、FIT電気は原則として一般送配電事業者買取になった。一般送配電事業者がFIT価格で買取り、需給調整も一般送配電事業者が行う。新電力がFIT再エネの電気を供給しようとする場合、一般送配電事業者から特定の発電所のFIT電気の卸供給を受けることができるが、その場合の卸供給単価を市場価格と同じにすると定められた。
これがFIT特定卸供給で、市場価格がFIT価格より高くなることはないという想定のもとに制度が作られている。市場価格とFIT価格の差額は、一般送配電事業者に費用負担調整機関(GIO)から補填されるが、市場価格がFIT価格を上回った場合どうするかという定めがなかったことがその証左である。結果的に市場価格以上の部分は送配電事業者の余剰利益となり、今回はそれをGIOに入れることになったと結論づけている。
一般送配電事業者の余剰利益は700億円程度にのぼると推定され、「電力・ガス取引監視等委員会」はこの余剰利益は再エネ賦課金に戻し、国民負担を減らすことが望ましいとの結論をだしたということであるが、新電力側にとって特定卸供給は全くリスクヘッジすることができない制度である。700億円は1年間の電力需要で割り算すると、たった0.07円/kWhにすぎず、国民負担を減らすことにはほとんど寄与できない。
一方でFIT特定卸は一部の新電力に集中しており、特定の新電力のみが700億円の損害を負っている。広く薄くではなく、制度として損害を発生させたことに鑑みて、まずはこの700億円は被害を受けた新電力に返還すべきである。
6、大量の資金移動の問題
該当箇所:20、21ページ
意見内容:資金移動の内訳をもっと詳細に解明すべきである。
理由:電力市場で「売り切れ」が発生し、市場価格の高騰、インバランス料金の高騰、そしてFIT特定卸供給の卸価格も高騰した。3つの高騰によって、2021年1月の1ヶ月間だけで2兆円近い資金移動が起こっている。しかし「中間取りまとめ」では、その数字が完全には解明されていない。2021年1月のJEPXの約定価格は概算1.7兆円になるが「中間取りまとめ」では0.7兆円の移動しか出ていない。旧一般電気事業者の売入札、買い戻しだけではなく、電力融通などによる、旧一般電気事業者間の取引もあったはずである。
そもそも、図28は「小売事業者から発電事業者」と書かれているが、需給計画を出すのは小売事業者ではないのか?需給計画とは需要と供給の両方の計画を出すという意味ではないのか?それが間違っていなければ、JEPXに「供給」し支払いを受けるのは、発電事業者ではなく「小売事業者」ではないのか?
図28の「発電事業者」と書かれている部分は「小売事業者」であり「大手電力9社」のみではないのか。「電発」と「JERA」は、小売事業者の求めに応じて発電し電気を供給しているだけではないのか?
図28の発電側に「上記以外の事業者(売約定)」と書かれている枠があるが、この中には新電力の小売事業者とIPP(独立発電事業者)が含まれているはずである。その区別も示されていない。現状の書き方では、多くの新電力がこの市場価格高騰によって利益を受けたように見えるが、需給逼迫によって、緊急の発電要請を受けて発電し、JEPXに直接販売したIPPの売上はいくらなのか。
以上、この図および説明は大きな誤解を生みやすく、より正確なものとすべきである。
7、売入札量の判断ルールの問題
該当箇所:22、23、24、25、29ページ
意見内容:旧一般電気事業者(旧一電小売)の需要計画と一般送配電事業者の供給確保量にズレを生じさせた、現状の売入札量判断マニュアルを改めるべきである。
理由:「中間取りまとめ」でも「電力市場の運営と系統の運用がそれぞれ別の主体により行われているバランシンググループ型の電力市場では、実需給断面で十分な予備率が確保されていても、この予備率は一般送配電事業者が確保した調整力を含む値であるため、市場に供出可能な供給力は需要量を下回る可能性がある」と書かれている。
その意味は図40のように、総需要と「市場の売り札不足」が重なるということだ。旧一電小売が、市場への売り入札を減らして自らの需要への供給を確保すると、市場で売り切れが発生する。売り切れが発生すると、その電気は送配電事業者が「変えなかった新電力」のユーザーに届ける。インバランス供給となり価格は高くなるが、電気は供給される。しかしその電気は、送配電事業者が旧一電小売から要請されて確保している電源の電気と重なる。
売り切れ状態では、新電力小売の事前予約とインバランス供給のダブルカウントが発生するというのが、この図の意味するところと思われる。
なぜダブルカウントが発生するのかというと、市場での売り切れを前提としない、需給計画を旧一電小売が策定していることによるのではないかと考えられる。日本の総需要の中で、市場の電気の比率は大きくなく、誤差範囲程度と考えられてきたのではないだろうか。ところが、2020年度冬季の市場価格高騰では、電力市場で大量の売り切れが発生し、そのインパクトが誤差範囲ではすまなくなった可能性がある。
下記の図は、電力・ガス取引監視等委員会の「スポット市場価格の動向等について」(2021年1月25日)のものである。「中間取りまとめ」には収録されていない。旧一般電気事業者小売が「売入札」量を判断するときのマニュアルである。自社需要、予備力、燃料制約を判断して余りがあれば売入札に回すルールになっている。
これだけだと電力市場の売り札不足は反映されず、供給する一般送配電事業者が気づくと「売り切れ分」がダブルカウントになって、供給不足が発生している可能性がある。それが少量であっても、需給逼迫の緊急時ならシステム全体のダウンにつながる。したがって、このマニュアルは是正されるべきだが、「中間取りまとめ」では指摘されていない。
8、隠されている原発問題
該当箇所:5、6、7、8、26、27、28ページ
意見内容:売入札を減らした原因は原発であることを認めるべきである。
理由:「中間取りまとめ」はLNG在庫減少の原因を、天然ガス産地の減産やLNG輸送上のトラブル、そして厳しい寒気としている。しかし、「中間取りまとめ」が触れていないLNG在庫減少の原因があった。高浜原発3号機と大飯原発3号機の運転停止延長だ。12月には、この2機の原発は運転中のはずだった。
大飯原発3号機は9月26日運転開始予定だったが、配管亀裂が見つかり延期、再開見通しは立たなくなった。高浜3号機は12月22日に運転開始予定だったが蒸気発生器細管トラブルで延期。代替の天然ガス燃料調達には2、3ヶ月を要するが、停止延長発表が10月後半で間に合わない。12月の発電計画から205万kWの電源が消えた。
12月中旬から電力市場への売入札を絞りはじめた原因はここにある。普段なら「だから原発は必要」と騒ぐところ、今回「中間取りまとめ」もあえて無視している。1基100万kWの巨大発電所は、急に停止すると需給計画に与える影響が大きい。稼働40年を超える老朽設備は、それだけで多くのトラブルを抱えている。最近は裁判で運転停止を命じられることも増えてきた。おそらく最も信頼性の低い電源が原発だ。原発は需給調整のお荷物だということが明白になってきた。そのことを見事に証明したのが、今回の市場価格高騰と言えるだろう。需給計画を原子力に依存し続けることは危険である。
9、電力市場の公正確保のための課題
該当箇所:77、78、79、80、81ページ
意見内容:損害を被った新電力各社に対し、遡及して正しい市場価格、正しいインバランス料金を算定し、払い戻しを行うべきである。
理由:2020年度冬季の市場価格高騰は様々な要因が重なり合ったものである。原発の停止期間延長、LNG調達の失敗、JEPX市場約定の仕組み、インバランス料金制度、FIT特定卸供給など。どれをとっても、電力市場に参加している新電力各社の責任が問われるものはない。電力市場で売り切れが発生し、大量のインバランスが発生し、約定価格とインバランス料金が高騰することを予測できなかったことが責任であると主張することは、銀行のATMにシステムトラブルが潜んでいることを熟知してATMを使わなければ、そのトラブルによる損失は弁償しないと主張するのに等しい。新電力各社の予見の不足は、総額2兆円に及ぶ損害額を受容することと、十分に釣り合うものとは思えない。
今回のトラブルを引き起こした原因者が、第一義的に損害を引き受けることが社会的正義であり公正なことであると言える。その第一義的原因者は、12月に予定通りの電力供給を行えなかった旧一般電気事業者(旧一電小売)である。どの程度の需要になるかは予想でき、原発の停止延長、北陸地域の寒波などの要因に対する燃料の備えができていなかった。そのことに対するペナルティが課されるべきである。
現状の資金移動では、原因者が大儲けし、責任のない新電力が大損害という単純な構図ではないが、少なくとも原因者には大損害は発生していない。原因と結果はもっと精緻に調査し、社会的正義と公正の確保のために、原因を発生させたものが負担して、トラブルによって損害を被った新電力各社に対し、遡及して正しい市場価格、正しいインバランス料金を算定し、差額の払い戻しを行うべきである。
以上
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