パブコメを出しました
エネルギー基本計画(案)に対する、グリーンピープルズパワーの意見を提出しました。
【第6次エネルギー基本計画(案)に提出したグリーンピープルズパワーのパブコメ】
2021年10月1日
1−1該当箇所
第6次エネルギー基本計画全般
1−2意見内容
第6次エネルギー基本計画は、福島原発事故から10年、気候危機対策の猶予まで「あと4年」と指摘されるような時代状況下で策定された。それなりの緊張感もあり、これまでエネルギー政策よりも前進したと評価できる面もある。評価のその一は、これまでのエネルギーミックス(長期エネルギー需給見通し)を変えたということである。長らく2030年に22〜24%とされてきた、電力供給における再エネ比率が36〜38%と伸びた。また省エネについても、意欲的に2030年には18%削減という方針が出された。背景には菅総理の「2030年に温室効果ガス46%削減」の表明があるが、その総理が退陣しても表明が守られるものと理解している。
さて一方で、不十分と思われる内容も多い。その内容を以下に示す。
1)2030年の再エネ目標は36〜38%でも低すぎる。
2)原子力発電の2030年目標は現実的でない。
3)石炭火力は2030年以前にゼロにすべきで、不確かなCCS、CCUS等を理由とした延命をするべきではない。
4)石油・天然ガスの開発は中止すべき。
5)省エネ目標をより高く設定すべき。
6)温室効果ガス排出は2050年ではなく2030年にゼロとすべき
以上の6つを再検討するよう求める。
2−1該当箇所
はじめに
【第六次エネルギー基本計画の構造と2050年目標と2030年度目標の関係】(175−203)
2−2意見内容
温室効果ガス排出は2050年にゼロではなく2030年にゼロとすべき
日本政府に求められているのは、気候危機をどう乗り越えるのかという具体的な方策であり、将来の努力目標ではない。すでに地球温暖化は深刻度を増し、一刻も早く進行を止めなければならない。そのためには温室効果ガスの排出を減らすことであり、2050年カーボンニュートラルが全世界の目標である。
しかしそこには、これから産業を発展させねばならない途上国もある。その発展をサポートし、そこで排出される温室効果ガスを先進国側でカバーするという「気候正義」の立場からすれば、日本は100%以上の削減が不可避である。しかし本基本計画にはそのような熱意が見られない。とりあえず最後に、日本のカーボンニュートラルに着地すれば良いという甘えが見える。
全世界での2050年カーボンニュートラルを達成するためには、日本は百何十%の削減をしなければならないのかということを計算し、本基本計画に明記されるべきである。クライメット・アクション・トラッカーは、日本は2030年までに120%の削減が必要であると指摘している。そのような大胆な目標を掲げてこそ、技術革新や新たな産業振興につながるのではないだろうか。
3−1該当箇所
5.2050年を見据えた2030年に向けた政策対応
(5)再生可能エネルギーの主力電源への取り組み(1562−2095)
(11)エネルギーシステム改革のさらなる推進(3076−3384)
3−2意見内容
再生可能エネルギーの系統への優先接続を復活すべきである。
日本では2030年に100%の温室効果ガス削減も不可能ではない。まず前提となる再エネポテンシャルが莫大にあるからだ。環境省の令和元年度再エネゾーニング調査によれば、太陽光発電27.4億kW、風力発14億kWで、1年に合計7.2兆kWhの電気を生み出す。これは現在の日本電力需要の7倍に相当する。工事方法や環境配慮など現実的な条件で絞り込んだ導入可能量でも、太陽光発電と風力発電を合わせて10億k W、1年で2.5兆kWhの電気を生み出す。2030年までに2兆kWh分の再エネ発電所を開発すれば、200%削減は実現できる。
再エネ発電所のリードタイムは、原子力や石炭火力などに比べて短く、今から始めれば2030年に間に合う。そのために第一に必要なことは、系統接続において再エネの優先接続を復活させることである。
現状は原子力や石炭、石油、LNGなどの老朽化した発電所の既得権が再エネの系統接続を阻んでいる。再エネ発電所は、系統容量がいっぱいで接続できないと言われているが、その「いっぱい」とは既存発電所の権利のことである。老朽化して動いていない発電所も多く、地球温暖化問題に照らして、稼働が困難になることが明らかな石炭火力、再稼働を到底できない原発などがある、原発3,300万kW、石炭5,000万kW、天然ガス8,000万kW、石油2,500万kW、これだけで合計18,800万kWの不要となる設備が、再エネの前に立ちはだかっている。
これを10年計画で2,000万kWずつ再エネに置き換える。発電所を廃止せずとも、系統接続の権利放棄をすれば良い。毎年2,000万kWの再エネが系統に繋がり、10年後には2億kWになっている。既存のダム水力も含めた再エネ発電所は1.4億kWで、3.4億kWとなり発電量は8,500億kWhと推計され、15%の省エネを前提とすれば、これで日本の需要をまかなえることになる。
これとは別に、2030までに「東アジア送電網」を用意し、毎年2,000万kWの再エネ発電所の開発を継続すれば、2040年には韓国や中国、ロシアなどへの送電により日本の温室効果ガス削減量を200%にまで高めていくことができる。日本の再エネポテンシャルを持ってすれば、それほど困難なことではない。
4−1該当箇所
5.2050年を見据えた2030年に向けた政策対応
(6)原子力政策の再構築(2096−2457)
4−2意見内容
原子力は2030年にゼロにすべきである。
福島原発事故を招いた深い反省をするのであれば、原子力政策を中止するという結論となるのが、普通の考え方である。頑固に原子力発電に固執するのは、核兵器開発という下心がないのであれば、再エネのポテンシャルへの無理解のなせる技である。その結果として、再エネの送配電網への接続を阻んでいるのだから、罪は二重に大きい。
本基本計画では、福島原発事故の原因として「安全神話が最大の問題であった」としている。にもかかわらず、「原子力規制委員会により、世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すれば」再稼働というのは「新しい安全神話」の誕生になっているのではないか。原子力規制委員会みずから、「安全を保証するものではない」と繰り返しており、そのような原発の再稼働は、「いかなる事情よりも安全性を最優先させる」ことになっていない。
原子力規制委員会による「安全の保証」を必須条件とするか、本基本計画の表現を「安全性よりも原子力事業者の経営を優先し」と書き改めるかのどちらかの選択しかないのではないか。
5−1該当箇所
5.2050年を見据えた2030年に向けた政策対応
(13)2030年度におけるエネルギー需給の見通し(3515−3607)
5クス(長期エネルギー需給見通し)から全く減っていない。これは「原発依存度の可能な限りの低減」と繰り返し書かれている、本基本計画とは矛盾している。
本基本計画の方針に従って、2030原発比率は2018年ミックスよりも低減されるべきであるが、計画の中身を見ると、そもそも稼働が難しいものまで含めて2030年目標を掲げているように見える。
再稼働させるとする原発の中には、活断層の上にあるとされる北海道の泊1、2号機や石川県の志賀2号機、福井県の敦賀2号機などが含まれる。「安全性を最優先」するならば、これらを強引に運転することはできないはずである。また炉心付近の土地確保すら困難な青森県の大間や、地元合意の難しい静岡の浜岡3、4号機、原子力規制委員会からも厳しい指摘を受けている柏崎刈羽6、7号機が含まれている。
このような実現可能性の低い不確実な想定は、他の電源の計画に著しく影響を与える。あるものと想定して将来の需給計画を作成し、それが欠落という場合には電力供給に致命的な打撃を与えるものであり厳に慎むべきである。現実の可能性に即して、きちんと判断すれば、少なくとも2030年に10%なのか15%なのか実現可能な数字が出てくる。その上で、維持費や廃棄物処分を含めた発電コストの増大を踏まえ、その設備能力を他の電源種別、具体的には再エネ等で置き換えることが、合理的か否かの検討が行われるべきである。
ちなみに現在の発電電力量では、再エネ20%に対して原発は5%に過ぎない。太陽光と風力発電だけでも12%と原発の発電量の2倍を超えている。すでに原発は、日本の電力需要にとって不可欠の電源ではなくなっている。
6−1該当箇所
4.2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応
(2)複数シナリオの重要性(656~818)
6−2意見内容
石炭火力は2030年以前にゼロにすべきである。
気候危機が叫ばれ、回避する対策開始を1日も早く進めることが求められている。温室効果ガスを最も多く出す電源が石炭火力であり、世界中で第一に石炭火力を止めることが大きなコンセンサスにもなっている。
しかるに本基本計画は、2030年にまだ19%の石炭火力を温存する。その理由はCCS、CCUS、DACCSなどの新技術を駆使しして、脱炭素石炭火力を作るからだとされている。しかし石炭火力はいかなる技術をもってしても温室効果ガス排出をゼロにはできない。CCSなどの新技術は未だ実用化されておらず、実証試験もしくは研究段階である。
一方で2030年に日本が求められているのは、少なくても2030年カーボンニュートラルである。2050年ではなく、2030年に世界に先駆けてカーボンニュートラルを達成するくらいでなければ、気候危機対策として世界をリードするとは言えない。日本の発電所の総設備容量は2.7億kWで、石炭火力の比率はすでに18.5%である。本基本計画の19%という数値はこれを上回り、2030年には石炭火力が増えることになっており、カーボンニュートラルの方針には相反すると思われる。
順当に考えるなら、日本はすべての石炭火力を廃止し、新設計画もすべて止めるのが妥当な政策である。
7−1該当箇所
5.2050年を見据えた2030年に向けた政策対応
(9)エネルギー安定供給とカーボンニュートラル時代を見据えたエネルギー、鉱物資源確保の推進(2675−3075)
7−2意見内容
石油、天然ガスの開発は中止すべきである。
気候危機に真摯に向き合い、対策を立てようとするのであれば、少なくとも2030年に石炭火力はゼロ、天然ガスを含む化石燃料も調整電源として最小限に止めるのが適正な政策である。
ところが本基本計画では、石炭火力を温存するのみならず、天然ガスも石油開発も続けるということがうたわれている。私たちは地球温暖化という現実に向き合っており、その対策を世界中から求められているが、本基本計画は、言葉では「地球温暖化対策に取り組む」と言いながら、その実態は温室効果ガスの排出拡大になりかねない内容である。
かつてオイルショックを経験し、その深刻な体験を乗り越える中で現在の政策が形成されていることはわかるが、時代は変化していることへの認識がなさすぎる。世界は再エネを中心とする時代に移行しており、石油も天然ガスももはやお荷物である。それを確保することは、日本産業界の温室効果ガスの排出量を増やし、世界経済の中での競争力を奪う行為であることを知るべきだ。
石油権益、天然ガス権益を出来る限り速やかに手放し、人的資金的資源をそれ以外の事業に振り向けるという政策変更が行われなければならない。
8−1該当箇所
7.国民各層とのコミュニケーションの充実
8−2意見内容
気候危機突破に向けた国民的議論を行うべし。
全ての国民が地球温暖化問題を「じぶんごと」として向き合うことが必要と書かれているが、「じぶんごと」とまずすべきなのは政府である。「全国民が」とか「広く一般家庭が」というような言葉で、政策課題を誤魔化すべきではない。もっとも努力が足りないのは政府である。しかし、あまりにも現実に目を背け、とるべき対策をとらず、その場しのぎを続けてきた結果、政府の中に「じぶんごと」として取り組める知識と技術を持った人材がいないのかもしれない。
それを補う方策として「気候危機突破のための国民的議論」を行うべきである。単に討論会を行うのではなく、各分野別に技術的解決策を話し合うプロジェクトを作ることである。1)エネルギー多消費型産業部門、2)産業界の省エネルギー部門、3)電力システムの脱炭素化部門、4)都市政策における気候変動対策部門、5)脱炭素のための交通・運輸部門、6)農林漁業における地球温暖化対策部門、7)観光等サービス業における地球温暖化対策部門など。
以上の分野ごとのプロジェクトチームを立ち上げ、ここで最低1年間の議論を行う。議論の方法を政府側が用意するのではなく、その方法を議論するところからプロジェクトは始まる。まずは共通の情報、用語、定義などの確認から始めることが必要になるだろう。
目標は各分野において、最大限の温室効果ガスの削減を行うための方法を見出すということである。
以上
まだ間に合います!
※募集期間:10月4日23時59分まで
※意見提出はこちらから⇒
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